最近非難の的となっている「ジンベエザメに乗るダイバー」の動画を、すでにご覧になった方も多いかもしれません。 今の時代にこのような行為は信じられません。

これはダイバーとしてあるまじき行為です。 「かわいそうな動物が、ダイバーの行為により疲労困憊し、命を脅かされている」というだけではなく(もちろんそれは最重要視されるべき点ですが)、ダイビング・コミュニティ全体にとっても重大な問題であることを認識しなくてはなりません。 私たちダイバーは、水中世界の代弁者であるべきです。乱獲、プラスチックごみ、サメのフィニング(サメのヒレを生きたまま切り取り、残った体を海に捨てる行為)、大規模な海洋汚染 ― ダイバーには、これらの脅威から海を守るべく立ち上がり、海の現状を世界に向けて発信する使命があります。 海洋生物の保護は、PADIのFour Pillars of Change(変化へ向けての4本の柱)のひとつであり、ほとんどのダイバーが積極的にダイビング・コミュニティの海洋保護活動をサポートし、動画にあるような行為を行なうことはありえません。

しかしこの動画では、私たちダイバーは自身の娯楽のために海の生き物を虐待する存在として映っています。 それだけでなく、この動画に登場するダイバーたちは、国際法及び現地の法律(2013年よりジンベエザメはインドネシアの法律によって保護されています)を犯しています。それらはまさに私たちダイバーが後押ししてきた法律です。研究者によると、過去75年間インド太平洋のジンベエザメ個体数は63%減少、大西洋では30%減少しています。過去10年間、世界全体では50%の減少が見られます。 これにより、IUCN(国際自然保護連合)はジンベエザメを絶滅危惧種に指定しています。

ジンベエザメは高い知能を持つ海洋生物です。 ダイバーの娯楽のために、このような扱いを受けるのはいかがなものでしょうか。すでに多くのダイバーがSNS配信を通して、この動画に対する怒りを発信しています。この動画に映るダイバーたち(またはその中の数人)はすでに逮捕されており、法の裁きを受けることでしょう。

あなたの声を世界に向けて発信してください。これはダイビングの信念に背く行為であることを。 あなたの行動は非常に重要な役割を果たします。アイルランド出身の政治家Edmund Burkeは、このような言葉を残しています:

「悪が勝利するために必要なたった1つのことは、善良な人たちが何もしないことである」
(The only thing necessary for the triumph of evil, is for good [people] to do nothing.)

ダイバーでない人がこの動画を観ていたら、この動画の行為は許されないものだと教えてください。 それをあなたの周りの人に伝えることで、大きな変化が生じます ― それはあなたがダイバーであり、あなたの言葉には説得力があるからです。 以下の「ジンベエザメと潜る行動規範」リストを確認することでダイバーとノンダイバーの「ジンベエザメ・ダイビング」におけるルールに対する認識を深め、このネガティブな事件を世界にとってポジティブな方向へと導きましょう。

whale shark code of conduct - Japanese

ジンベエザメと潜る行動規範(ルール)
・ ジンベエザメとダイバー自身の安全を確保できる最低距離を保つ
・ ジンベエザメに触らない・乗らない・執拗に後を追わない
・ ジンベエザメの正面に立たない・進む道をふさがない
・ ジンベエザメが自由に動けるよう細心の注意を払う
・ ジンベエザメのストレスになるため、フラッシュをたかない
・ ジンベエザメの周りをゆっくり泳ぐ
・ モーター付きの乗り物を使用しない
・ 現地の法律を遵守する
・ ジンベエザメ保護の規制をサポートする
・ ジンベエザメ保護のイベントをサポートする
AWAREサメの保護スペシャルティ・コースを受講して、ジンベエザメについて詳しく知る

私たちは海の代弁者です。 常にその名にふさわしい行いを心がけましょう。
ダイバーは海を守る者です。 ダイビング・コミュニティは、このような行為を決して許容しません。

Dr. Drew Richardson
PADI President & CEO

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