水中写真家兼映像作家、そしてPADIコースディレクターでもあるLuke Inmanさんが、ダイビングへの情熱、コルテス海での思い出、アシカとの出会いからインスピレーションを得た2017年の再発行限定PADI Cカードの誕生エピソードについて語ります。

メキシコの西側に位置するラパス(La Paz)から、ボートで30分ほど北に進むと、巨大な岩のような島が見え、「ウォ!ウォ!」という鳴き声が聞こえてきます。そこはアシカの楽園と呼ばれるロス・イスロテス(Los Islotes)。世界中のダイバーの憧れスポットのひとつです。

Los Islotes in La Paz, Mexico shot by Luke Inman
Photo: Luke Inman

海へダイブすると、クリクリな目をした好奇心旺盛なアシカの赤ちゃんが近寄ってきます。がぶがぶとフィンやスノーケルを咬んだり、クルクルと旋回しながら後をついてきます。そんなキュートな姿はまるで子犬のよう。

Sea Lions in Los Islotes in La Paz, Mexico shot by Luke InmanPhoto: Luke Inman

手を差し出すと、クンクン嗅いだり、ぱくっと甘噛みしたりします。

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哺乳類は表情が豊かなので、魚類より心を通わせることができるかもしれませんね。海で大物を見慣れたベテランダイバーでも、アシカの可愛さにメロメロになってしまうでしょう。

赤ちゃんアシカが泳ぎ回り始めるのは毎年9月頃なので、ベストシーズンは水温がまだ暖かい9月と10月です。

日本からラパスへは、長い移動時間を覚悟する必要がありますが、アシカとふれあうという最高のご褒美が待っています。ダイビング旅行を終えた後も「アシカが待つあの場所でまた潜りたい!」と思わせてくれるエリアです。ぜひ訪れてみてください。

アシカの楽園の更なる魅力については、世界を旅する写真家ダイバー・Luke Inmanさんのインタビューをご覧ください。

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Q.これまで旅やダイビングをした場所の中で、最もインスピレーションを受けた場所はどこですか?

野生動物たちとの出会いにあふれるコルテス海(別名カルフォルニア湾)のロス・イスロテス(Los Islotes)です。メキシコに位置するロス・イスロテスは、メディアが選ぶ世界トップ10のダイビングサイトの常連です。私は世界各地のダイビングサイトを旅していますが、ロス・イスロテスは私が思うナンバー1のダイビングサイトです。

深海にあるレック、巨大なダイビングサイト、または神秘的なセノーテを選ぶ思っていた人が多いかもしれませんが、ロス・イスロテスで自由気ままなアシカと一緒にダイビングするのが私の変わらぬファーストチョイスです。

Sea Lions in Los Islotes in La Paz, Mexico shot by Luke Inman
Photo: Luke Inman

Q.コルテス海とロス・イスロテスに心を奪われた理由は何ですか? 他のエリアにはない魅力を教えてください。

都市部から近い距離にありながら人々に動物との真のふれあいを提供できるスポットは世界にわずかしかありません。

初めてのロス・イスロテスの旅は、心安らぐものでした。そのときにアシカから啓発を受けた気がします。ロス・イスロテスに到着したとき、そこはアシカが奏でる音や海鳥の鳴き声など、さまざまな騒音で溢れ、波の音はアシカの鳴き声によってかき消されていました。アシカたちはお互いに意思を伝え、訪問者である私を歓迎してくれました。そしてある声が魂に語りかけてくるのです:「ここは魔法が起きる場所」だと。

その魔法にかかれば、アシカの虜になってしまうでしょう。その魔法には、魔術師も呪文もいりません。アシカの愛くるしさとお茶目な姿に心を奪われてしまうはずです。

Q. ロス・イスロテスのアシカの特徴はなんですか?

ロス・イスロテスには、コルテス海の他の島より多くの人が訪れているため、アシカたちは人に慣れています。アシカは本当に可愛い生き物で、彼らとのふれあいは至福のひと時です。

Sea Lions in Los Islotes in La Paz, Mexico shot by Luke Inman
Photo: Luke Inman

Q. アシカとダイビングする一番の楽しさは何ですか?

アシカは私に本当の安らぎと野生動物のふれあう楽しさを教えてくれました。彼らの笑顔は、無邪気で純粋な喜びと、何の煩悩もなかった子供時代を思い出させてくれます。アシカは私のメディテーション(瞑想)です。彼らとふれあうことで、癒しと安らぎを得ることができます。

Luke Inman PADI Replacement CardQ. 2017年限定Cカードの撮影にまつわるエピソードを教えてください。

最も忘れられないのはある幼いメスのアシカとの思い出です。皮肉にもその子の体には「42」のマークが付いていました。(イギリス作家ダグラス・アダムズの某作品で「42」は「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問と答え」という一節があります。)

私が訪れる度に彼女は姿を現し、アシカとのふれあい方について教えてくれました。彼女は大人しく親切で、とりわけ優しかった。このアシカが「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問と答え」なのかどうか疑問を抱く人もいるでしょうが、少なくとも私はそうだと思っています。

このアシカとのふれあいは、決まって彼女から軽く衝突してくるところから始まります。「待ち伏せ攻撃」と言った方がよいかもしれませんね。その動きはまるで訓練された軍事ダイバーのようでした。私は毎回不意打ちをくわされましたが、その後に頭を私の頭にくっつけて甘えてきます。彼女の頬ひげを額で感じることができました。

そして次は優しく私の手を噛み始めます。これは、私の手を彼女の体の向こう側か、耳の後ろに誘導しようというものです。彼女の目的は、私に耳をかいてほしいのでしょう。耳をかき終えると、まるで子犬のように「なでて」と言わんばかりに自分の頭部を私の手の下に移動してきます。そんなときは、カメラを置いてたっぷりと可愛がってあげました。

しかしその数年後、「42」は姿を現さなくなりました。年をとったか、もしくは大人になったのか、彼女の世界に「気まぐれな騒がしい侵入者」はいらなくなったのだと思いました。でも私は間違っていたのです。2~3年後、再び「42」に会いました。すっかり大人になった彼女は、水中で私を長年離れ離れになっていた友のように歓迎してくれたのです。

今まであんなに生き生きとした姿を見たことがありませんでした。子供だったアシカが大人になっても懐いてくるなんて不可能だと思っていましたが、「待ち伏せ攻撃」や耳とおなかをこすりつけてくる仕草は非常に懐かしいものでした。そして再び、私はカメラを置き、長年離れ離れになっていた友の要望に応え一緒に戯れました。彼女の識別タグには少し損傷があり、実際のタグは磨耗してしまっていました。スポットの研修者に「42」が私を記憶している可能性について聞きましたが「可能性はあるが、科学的に証明するのは難しい」と言われました。

Sea Lions in Los Islotes in La Paz, Mexico shot by Luke Inman
Photo: Luke Inman

Q. 水中写真やビデオの撮影で、動物の個性や「魂」を捉えるコツを教えてください。

PADIデジタル水中フォトグラファーまたは水中ビデオグラファーコースを受けてみてください。受講後、きっとコツをつかめるはずです。

Q. 水中撮影に関してアドバイスをください。

1.環境を壊さない

2.一瞬を捉える

3.物語を伝える

4.「撮影機材」ではなく、「芸術」に重点を置く

Q. 自分の作品によって、人々にどのような影響を与えたいですか?

見る人の「地球を守る思い」を喚起したいです。

 

Luke Inmanさんが撮影したアシカの写真が載っているCカードは再発行限定での提供となります。

詳しくはPADIダイブショップまでお問い合わせください。

Luke Inmanさんの作品をもっとご覧になりたい方はこちらからどうぞ: lukeinman.com.

 

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